インタビュー

バドミントンの職人 | 成彬-勝利への夢を編む人

“ガット張りは孤独な仕事ですが、張り終えたラケットは自作の芸術品みたいなものです” – VPS ガット張り師・成彬

 

バドミントンの試合では、どうしても選手にスポットライトが当たる。観客はきびきびとしたプレーや耳当たりのいいショットを楽しむのだが、その裏側で、ラケットを調整して選手をアシストする人たちがいる。表舞台に立つことはないが、選手にとっては大事なパートナー、それがガット張り師。

 

 

この職業はあまり知られていないが、スムーズにショットを打てるかどうかはガット張りにかかっており、試合の結果をも左右することから、張り師は冷静になってプロの力を発揮し、選手のために最適の張り方とポンド数を選んで、ラケットをベストコンディションにまで調整していく。

 

この道18年のベテランガット張り師、成彬さんは、1999年にVICTORに入ったときは、中国のバドミントンリーグでコートのメンテナンス要員を務めていた。その頃はプロのガット張り師という職業ではなかったが、選手の要望が増えて仕事の細分化が進んだことから、ガット張りの重要性を見抜いたVICTORがガット張り業務の体制を整えて設備を取り揃え、張り師を養成する一方で、ガット張り機を改良し、ソフト・ハードの両面でレベルアップした。現在、VICTORが開発したガット張りの技法は相当のレベルに達し、ガット張りのアカデミーを設立、専門資格の認証を行っている。成彬さんはVICTORが育て上げた、専門資格を有するガット張り師である。

 

 

「ただ張るだけなら、一日か二日でできるようになりますが、全種類のガットを完全にマスターするまでに数年かかります。」成彬さんは、自分ではのんびりした性格と言っているが、仕事に対しては厳しい態度で臨む。張り師がつらいのは、一日10数時間、20時間立ちっぱなしが当たり前で足が棒になる点、いつも指が切り傷だらけで、おまけにタコができる点だ。「このスポーツが好きでなければ、やっていけません。」バドミントンへの愛情を選手へのアシストに注ぎ込み、選手のプレーぶりを細かく観察し、選手ごとの癖を知り、それぞれのニーズに合わせて最適のガット張りをする。設備的、技術的な面の研究を積み重ね、世界中のガット張りの技術を学んでは、良いと思われる点を取り入れてガット張りの技術を磨いている。

 

 

 

 

彼は「こだわり」という言葉で自分を勇気づけている。「ガット張りは孤独な仕事です。」かつて大会前になると、ホテルの部屋にはラケットが山のように積み上がり、日夜仕事に没頭した。誰も助けてくれない、話相手もいない、そして何より、この気持ちを誰にもわかってもらえない。「しかし、ガット張りがひとつの芸術なら、張り終えたラケットは自作の芸術品みたいなもので、そう考えると、孤独であっても学ぶ力が湧いてきます。」特に、自分がガットを張ったラケットを持った選手が大会で優勝した瞬間、心の中は誇りと自信で満たされ、充実感を感じる。彼のおかげでVICTORは毎年メジャータイトルを取る選手を出しており、まさに「チャンピオンメーカー」だ。

ガット張りの仕事だけでなく、VICTORが運営するガット張りのアカデミーで人材育成に取り組み、良質の技術と経験を伝えており、理論と実践の同時進行で会員の専門知識を向上させ、ガット張りの重要性、そしてVICTORが重視するディテールをわかってもらう。彼は「ベストはあっても、ベターはない」のスタンスで、自分が立てた基準を超えて前進を続け、ベストを追求し、VICTORチームと共に、全選手のために勝利へのガットを編んでいる。