インタビュー

バドミントンの職人 | 熊国勝-勝利へのペースメーカー

“よりよいデザインを追求し、フォロワーが増えていくトレンドセッターになる”-バドミントンシューズデザイナー・熊国勝

デザイナーはロマンティストだという人がいる。感性に任せて、環境に縛られない人というイメージであり、逆に理系出身は理性的で、論理とデータを大事にすると思われがちだ。VICTORのシューズデザイナー熊国勝は、こんなステレオタイプにあまり当てはまらない存在である。

 

熊(ゆう)さんの家は家具のデザインに従事し、父親の影響を受けて、小さい頃からデザインに興味を持っていた。2009年のVICTOR入社後、ガット張り機、バドミントンシューズのデザイン業務に参加し、当初慣れない新人が今では一人前のデザイナーに成長し、8年にわたってデザインチームを率いて、数々の多難な任務をこなしてきた。

 

 

バドミントンはスピードが命。試合に勝つには、選手の実力以外に、道具や装備がものを言う。「いい仕事がしたければ、まず道具を磨け」という中国のことわざどおり、いいバドミントンシューズは選手に勝利への翼をもたらす。

 

バドミントンシューズの設計には、複数部門の協力が求められる。新しいモデルのシューズを発表する前に、開発チームが情報を収集し、市場のニーズに照らして材質、製造方法を決定し、最後の段階になってプロトタイプを描く。バドミントンシューズは見た目のよさだけでなく、ショック吸収、保護性、安定性、快適さといった機能性が重視されるので、普通の靴のデザインに較べて制約が多い。

 

 

「設計開発の作業は簡単ではありません。シューズデザイナーは自分の好きなようにやれるわけではなく、一つひとつのステップに目標と市場に反映されている必要があります。」目標というのは、はく人の習慣を知り、いろんな方面にまで気を配って機能性を高めるとともに、魅力ある包装パッケージにしなければならない。特にプロ選手の場合、VICTORは個人差があるのを踏まえてオーダーメイドサービスを提供しており、デザイナーが選手に会って足をきめ細かく計測して何度も調整し、本人の足にベストフィットのシューズに仕上げている。

 

 

靴の設計を学び始めてから、思ったとおりに設計できるようになるまで、シューズデザイナー養成には数年を要する。「VICTORの素晴らしいところは、チームと共に成長できることです。台湾はスポーツ用品のブランドとデザイナーが少なく、バドミントンシューズはその中でも特殊な部類に入ることから、VICTORのシューズデザイナーとして、一流のライバル社と競争し、特に他社が自分のデザインをコピーしたときなどは充実感を感じますね。」プロ選手が自分の設計したシューズで大会に出場したり、ヒット商品を出したりすると、自分の仕事が認められたことになり、その喜びようは言葉では言い表せないほどだ。

 

 

プロダクトデザインの企画立案だけでなく、熊さんは新入社員のデザイナーをリードし、自らの経験を伝えることでトレーニング時間を短縮している。「この仕事に従事する人は、最初に必ず市場という試練にさらされる。外観と機能の間でいかにバランスをとるかでデザイナーの知恵が試されると同時に、各部門との調整能力も大事になってくる。」厳しい市場とタイトなスケジュールというプレッシャーがかかる環境で、多方面からアイディアを求めてクリエーティブさを維持し、論理的な思考をもってデザインにパワフルさを注ぎ込むとともに、自分自身とVICTORのために将来のビジョンを掲げ、「VICTORは常に消費者が求めるシューズについて考えている。私も努力してよりよいデザインを追求し、先頭ランナーであり続け、フォロワーが増えていくトレンドセッターになりたいと願っています。」